「デザインの仕事」を工程に分けてみる
たとえば、店舗の新しいWebサイトを作るとします。写真やイラストを用意するだけでなく、誰に来てほしいのかを聞き、必要な情報を整理し、予約までの流れを設計し、スマートフォンで読めるかを確認する。公開後に情報を更新できるかも、制作の一部です。
このうち、ラフの候補を出す、文章の別案を作る、画像の方向性を探る工程には、AIを使える場面があります。一方、候補が増えても、店の実情と合っているか、利用者が迷わないかは別の問いです。生成の速さと、完成品として使えることは同じではありません。
なくならないと言い切ることもできない
「最後は人間だから大丈夫」とだけ言うのは、制作会社として誠実ではないと考えます。これまで時間をかけていた作業が短くなれば、依頼の内容や価格への期待も変わり得ます。作業量に価値を置いてきた仕事ほど、説明の仕方を見直す必要があるでしょう。
ILOの2025年の研究は、生成AIが職業に与え得る影響を作業単位で推計しています。ここでいう技術への曝露は、そのまま失業の予測を意味しません。技術的にできることと、組織が実際に任せること、その結果として雇用がどう変わるかは分けて読む必要があります。
候補が増えるほど、選ぶ理由が必要になる
仮に、ひとつの広告に対して短時間で20案を作れたとします。その20案の中から、派手な案を選ぶのか、商品が正確に伝わる案を選ぶのか。価格や注意事項が読みやすいか、元の商品にない特徴を描いていないか。比較の基準がなければ、候補の多さがそのまま迷いになります。
作る力を手放してよいという話でもありません。文字組み、余白、色、写真の扱いを理解しているからこそ、違和感を見つけて直せます。AIの出力を採用しない判断や、別の方法で仕上げる選択も含めて、デザインの知識は評価の土台になります。
Sofriaではどう考えるか
Sofriaは制作実績として「AIポートレート・モーションスタディ」などを公開しています。AIを用いた表現を実際に見せられることと、あらゆる案件で同じ方法が適していることは別です。この連載では、公開している制作物を実例として扱い、確認できない効率改善の数字や顧客の反応は語りません。
私たちが大切にしたいのは、「何を作れるか」に加えて「なぜそれを選ぶか」を説明できることです。AIを使うかどうかも目的から考える。仕事の形が変わる可能性を受け止めながら、成果物を相手の状況に合わせて届ける力を磨く。それが制作会社としての出発点です。
補足:バナー制作を工程で見ると
架空の新商品バナーを例にすると、最初の材料は商品写真、価格、発売日、掲載先のサイズです。ここが未確定なら、どれだけ美しい画像を作っても、実際に掲載できる広告にはなりません。まず確定情報と仮置きの情報を分けます。
次に、商品を大きく見せる案と、使用場面を伝える案を比較します。AIは方向性を広げる助けになりますが、比較するときは同じ条件を使います。片方だけ文字が大きい、価格が抜けている、といった状態では、表現の違いと情報の差が混ざるからです。
最後は小さな表示でも読めるか、商品に存在しない形や付属品を加えていないか、リンク先と説明が一致するかを確認します。こうして工程を並べると、作業が短くなる部分と、判断が必要な部分を具体的に話せます。AIを導入する前の業務整理にも使える見方です。
よくある疑問
Q. デザイナーは、これから何を学ぶとよいのでしょうか。
文字組みやレイアウトなどの基礎に加え、依頼の目的を整理する力と、出力を検証する力を組み合わせることが大切だと考えます。ツールの操作は変わっても、読み手に何が伝わるかを説明する力は別の道具にも応用できます。
Q. AIを使えば制作費は必ず安くなりますか。
案件によります。生成が短くなっても、資料整理や確認、修正に時間がかかる場合があります。単に作業時間だけを比べず、必要な工程と仕上がりの条件をそろえて見積もる必要があります。
では、AIに作業を頼むだけでなく、役割を分け、結果を評価するには何が必要でしょうか。次回は「AIをディレクションする」という仕事を考えます。
出典・参考資料
外部資料の説明とSofriaの考察・提案を分けて記載しています。技術や制度は資料確認時点の情報です。
