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SOFRIA — TURNING VISIONS INTO VISUALS
SOFRIA JOURNAL ESSAY 01 / 05

「人間らしい文章」は、誰かが体験した証拠になるのか

例えば、次のような口コミがあったとします。

「店に入った瞬間、出汁の香りがした。少し待ったけれど、それも気にならないくらい、おいしかった。」

味だけでなく、香りや待ち時間にも触れている。大げさに褒めているわけでもない。実際に訪れた人の言葉として、受け取りやすい文章です。

けれど、その自然さだけで、来店した事実まで分かるでしょうか。

冒頭の口コミは、考え方を説明するための架空の例です。

黒猫が口コミを表す吹き出しと食事する人形を見比べる、文章と実体験の関係を問い直す挿絵
AIで制作したコンセプトイラストです。人物・場面は架空で、実際の顧客や制作実績を示すものではありません。

細部が伝えるのは、臨場感

文章に具体的な描写があると、私たちは場面を思い浮かべやすくなります。少しの不満や個人的な好みも、体験談らしさを生みます。

ただし、こうした表現は創作にも使われます。小説の場面が鮮明に浮かんでも、その出来事が実際に起きたとは限りません。

生成AIがつくる文章にも、同じことが言えます。店の紹介や既存の感想をもとに、訪問したかのような文章をつくれても、それだけでは誰かの来店体験を裏づけられません。

具体的な描写は、体験を伝える力になります。しかし、体験があったことを、それ自体で証明するものではありません。

AIが整えた、本当の体験もある

実際に食事をした人が、箇条書きの感想をAIに整えてもらうこともあります。自分の経験を別の言語で伝えるために、翻訳や文章作成の支援を使う人もいるでしょう。

その場合に確認したいのは、元の体験が保たれているかです。

「料理がおいしかった」というメモから、本人が話していない香りや接客の描写まで加わっていないか。「少し待った」が、待ち時間を楽しんだという意味に変わっていないか。

本人が体験していても、編集の途中で事実や感想が変わる可能性はあります。反対に、人間が一文字ずつ書いていても、体験そのものが作り話の場合はあります。

文章に使った道具だけでは、その内容の確かさは判断できないのです。

制作する側が守りたい境界

お客様の声を読みやすく整えることは、制作の仕事の一つです。そのとき、伝わりやすくする編集と、内容をつくり足す編集の境界を守る必要があります。

元の発言にない成果を加えない。個人の感想を、誰にでも当てはまる効果に変えない。意味に関わる修正は、発言者に確認する。

Sofriaとしても、こうした確認を大切にしたいと考えます。

読み手としても、まずは「具体的だから本当」と受け取る前に、何をもとに書かれた文章なのかへ目を向けてみる。その一歩が、表現の巧さと情報の確かさを見分ける助けになります。

読み手・発信者の確認ポイント

  • 元の体験や発言を確認できるか
  • 編集で香り・効果・評価をつくり足していないか
  • 意味の変わる修正を発言者へ確認したか

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