最初に渡すのは、答えよりも条件
「おしゃれなサイトにして」という依頼には、判断に必要な情報が足りません。誰が見るのか、何をしてほしいのか、何を誤解されたくないのか。これらが曖昧なままでは、見栄えのよい案が出ても良し悪しを決められません。
仮に採用ページを作るなら、応募者に知ってほしい業務、働き方の事実、応募前の不安、更新できる担当者を整理します。AIへの依頼も「文章を作る」から「この確認済み情報の範囲で、応募者の疑問に答える構成案を出す」へ変わります。材料にない待遇を補わせないことも、条件のひとつです。
役割を分けても、正しさは自動で保証されない
発想を広げる役、内容を整理する役、抜けを探す役。工程を分ければ、どの段階で問題が起きたかを追いやすくなります。ただし、複数のAIが同意したことを、事実の裏づけとして扱うのは危険です。同じ誤った前提を共有している可能性があるからです。
NISTの生成AI向けリスク管理資料は、もっともらしい誤りであるconfabulationをリスクとして挙げています。文章が自然であることを確認の代わりにせず、金額や仕様、引用先は元の資料に戻って照合する。その工程を制作の中に組み込む必要があります。
評価基準を、出力を見る前に置く
仕上がった案を見てから基準を考えると、見栄えに引っ張られます。たとえば広告なら、商品名を読み取れるか、訴求が事実に沿うか、遷移先との内容が一致するか。先に確かめる点を決めておけば、修正指示も「もっと良く」から具体的なものになります。
すべてを点数にする必要はありません。「掲載不可の誤り」「改善したい表現」「好みの違い」を分けるだけでも、修正の優先順位が見えてきます。依頼の履歴と採用理由を残せば、次の担当者も判断を引き継げます。これは、これからの運用を考える際の提案です。
Sofriaではどう考えるか
AIをディレクションする力は、ツールを数多く契約することではないと考えます。目的と制約を言葉にし、出力を制作の知識で評価し、必要なら依頼そのものを組み直す力です。Sofriaが公開するビジュアルスタディも、完成例を見て表現の方向を話し合う材料になります。
ただし、すべての案件で複数AIを使い分けている、特定の検証方式を導入済みである、といった社内運用をここで主張するものではありません。どのような工程が適切かは、案件の情報量と公開後の影響から考えるべきです。道具を増やす前に、誰が何を確かめるかを明確にすることを重視したいと思います。
補足:依頼メモは、5つの問いで作れる
制作前の依頼メモには、誰に届けるか、何をしてほしいか、どの資料を使うか、何を変えてはいけないか、何をもって完成とするかを書きます。長文のプロンプトを作ることが目的ではありません。判断に必要な条件が抜けていないことが重要です。
たとえば採用原稿なら、職種の説明は確認済みの募集要項を使い、給与や勤務条件を推測で補わないと指定します。柔らかい語り口に変える依頼と、待遇そのものを変える依頼は違います。原稿の修正範囲を限定すれば、確認する担当者もどこを見ればよいか分かります。
出力が期待と違ったときは、すぐに指示を足す前に原因を分けます。資料不足なら材料を補う。目的が伝わっていなければ依頼を直す。表現だけの問題なら該当箇所を調整する。原因の違う修正を重ねないことが、やり取りを理解しやすくします。
よくある疑問
Q. 複数のAIにチェックさせれば十分ですか。
見落としを探す補助にはなりますが、同じ前提や似た情報に依存する可能性があります。仕様や引用、価格の正しさは、AI同士の一致とは別に一次資料へ戻って確認します。
Q. 細かな指示は創造性を狭めませんか。
固定する条件と、自由に提案してよい範囲を分ければ両立できます。商品名や事実は固定し、構成や表現には複数案を求める、といった分け方です。
この考え方を進めると、もうひとつの疑問が生まれます。その指示や評価までAIが行えるようになったら、人間には何が残るのでしょうか。
出典・参考資料
外部資料の説明とSofriaの考察・提案を分けて記載しています。技術や制度は資料確認時点の情報です。

