「AIで何か」より、止まっている仕事を見る
仮に、商品の紹介ページをなかなか更新できない事業者がいるとします。原因は文章を書く時間でしょうか。写真がそろわないこと、仕様が部門ごとに違うこと、承認する人が決まっていないことかもしれません。文章生成を速くしても、別の場所で止まっていれば公開までの時間は短くなりません。
まず、情報の受け取りから公開後の修正までを並べ、待ち時間と手戻りを見つける。AIを使う場所はその後に決めます。既存の業務を理解しないまま自動化すると、曖昧な情報が速く流れる仕組みになるおそれがあります。
事業機会は、生成の前後にもある
確認済みの素材を整理する、担当者が更新しやすい形にする、複数案を選びやすく示す、公開後の誤りを直しやすくする。これらは派手な生成デモにはなりませんが、仕事を進めるために必要な支援です。AIによって候補が増えるほど、その整理や確認に価値が生まれる可能性があります。
ただし、これは事業機会の仮説であり、利益が出る保証ではありません。相手が困っているか、対価を払うほどの問題か、継続して提供できるかは別に確かめる必要があります。「AIを使っています」という説明だけで選ばれ続けるのは難しいでしょう。
小さく試して、確認の費用まで見る
試すなら、範囲を限定し、やり直せる仕事から始める方法があります。たとえば、公開前の原稿の構成案を作る工程だけを対象にし、従来の方法と比べます。生成にかかった時間だけでなく、事実確認、修正、承認までを含めて見ることが大切です。
速くなっても品質が下がったり、別の担当者へ負担が移ったりすれば、改善とは言い切れません。作業時間、修正の理由、使えなかった案を記録し、続けるかを判断する。ここで示した方法は検討のための例であり、Sofriaの実証済み成果として提示しているものではありません。
Sofriaではどう考えるか
Sofriaは、Web、デザイン、AIビジュアル、映像などの制作を扱っています。公開している制作物は、相談の際に表現の可能性を共有する材料になります。その先にあるのは、技術そのものを売り込むことより、顧客が伝えたいことと、受け手が知りたいことをつなぐ仕事です。
AIで変わる工程を見ないふりはしない。同時に、新しさだけを理由にすべてを置き換えない。目的を決め、使える形に整え、信頼を損なわずに届ける。その全体を見直すことに、制作会社としての機会があると考えます。何から始めるか迷うときは、いま時間がかかっている工程や、伝わりにくい情報から一緒に整理できればと思います。
補足:小さな試行で記録しておきたいこと
まず、対象を「商品紹介ページ全体」ではなく、「確認済みの仕様から構成案を作る」といった一工程に絞ります。比較する材料と完成条件をそろえ、従来の方法とAIを使う方法で、どこに時間がかかったかを記録します。
記録したいのは作成時間だけではありません。誤りを直した理由、承認に必要だったやり取り、別の担当者へ移った作業、ツールの費用も含めます。件数が少ない試行では、たまたま相性がよい題材だった可能性もあるため、その結果を全業務の効果へ広げすぎないようにします。
改善が見えたら、次は誰でも同じ条件で使えるかを確認します。特定の人だけが直せる仕組みでは、引継ぎが難しくなるからです。停止や修正の方法まで説明できる状態にしてから対象を広げる。この積み重ねなら、導入そのものではなく、仕事が進むことを目的にできます。
よくある疑問
Q. AIに詳しくない会社にも、始められることはありますか。
まずは更新が止まる理由や、何度も確認している情報を整理することから始められます。その結果、AIより先に資料の統一や担当の明確化が必要だと分かる場合もあります。
Q. どの工程をAIへ任せるべきでしょうか。
材料と完成条件を説明でき、結果を確かめやすく、やり直せる工程が試行の候補になります。外部への発信や重要な変更は、その先の確認と責任の分担まで含めて考えます。
全7回を通して考えてきたのは、AIの能力だけでなく、それを社会や仕事の中でどう使うかでした。答えを固定する連載ではなく、変化のたびに問い直すための出発点として、制作と情報の受け取り方を考え続けていきます。
出典・参考資料
外部資料の説明とSofriaの考察・提案を分けて記載しています。技術や制度は資料確認時点の情報です。

