文章を整えることと、体験を作ること
実際に利用した人が、言葉にしにくかった感想をAIで整理することはあります。誤字を直す、長い文章を短くする、別の言語へ翻訳する。本人の経験と評価を変えずに伝えるための支援と、利用していない商品に満足したという話を作ることは区別すべきです。
境界は、AIを使ったかどうかだけでは決まりません。本人が言っていない効果や、なかった接客のやり取りを付け足せば、実体験が出発点でも内容は変わってしまいます。掲載する側は、読みやすさと引き換えに、経験の中身を作り替えていないかを確認する必要があります。
星の数から、判断に使える情報へ
仮に、あるサービスを選ぶなら「最高だった」という評価だけより、利用時期、使った機能、困った点、その後の対応が、自分の状況と合うかを見ます。具体的な文章も捏造は可能なので、それだけで本物とは断言しません。公式情報や別の媒体と照合し、判断材料を増やすための読み方です。
短期間に似た投稿が集まった場合も、不正の証拠と決めつけないことが大切です。催事や案内の時期が重なった可能性もあります。違和感があれば購入を急がず、販売条件や問い合わせへの回答を確認する。人物の正体を推測するより、自分の判断に必要な事実へ戻る方が建設的です。
掲載する側にも、信頼の作り方がある
企業サイトで声を紹介するなら、どのような立場の人が、何を利用した際の感想なのかを説明できることが重要です。文章を編集した場合は、本人の意図を変えていないか確かめる。広告や依頼による投稿を、自然発生した第三者の評価と同じように見せない配慮も必要になります。
こうした問題は、AIという言葉が広まる前からありました。AIは文章を作る手間を下げますが、問われるのは経験や関係性について誤解を生まないかです。米国FTCは2024年に、虚偽のレビュー等を対象とする最終規則を公表しました。これは米国の制度の例であり、そのまま日本の案件へ適用するという意味ではありません。
Sofriaではどう考えるか
制作会社は、顧客の魅力を伝える立場だからこそ、材料のない実績や体験談を補ってはいけないと考えます。原稿に説得力が足りなければ、感想を作るのではなく、公開できる制作物、担当範囲、確認済みの事実を充実させる方向で考えたいと思います。
たとえば、顧客の声がまだないページなら、制作の流れやよくある疑問を丁寧に示す方法があります。これは改善案であり、特定の顧客事例ではありません。誰かが話したような文章で空欄を埋めるより、何が分かり、何がまだ分からないかを伝える。その積み重ねが、依頼前の不安を減らすと考えます。
補足:「お客様の声」を編集するときの境界
たとえば「説明が分かりやすかった」という実際の感想を、「丁寧で分かりやすい説明でした」と整える場合を考えます。表現を変えた後も、元の意味と本人の評価が保たれているかを確認します。読みやすくしたことが、内容を広げる理由にはなりません。
そこへ「売上も大幅に上がりました」と付け足せば、元の感想とは別の主張になります。数値がなくても、成果があったように語れば受け手の判断に影響します。文章の説得力を上げるときほど、その一文を支える資料や本人の確認があるかに戻る必要があります。
声を掲載できないときは、作業の範囲、制作物、依頼から納品までの流れを示す方法があります。企業側が説明する情報と、顧客本人が評価する情報を区別して見せる。空欄を埋めるより、情報の出どころが分かるページを作ることが大切です。
よくある疑問
Q. AIで整えた口コミは、すべて偽物ですか。
いいえ。本人の実体験を整理・翻訳する使い方と、存在しない体験を作る行為は異なります。ただし、掲載先の規約や開示の要件は別に確認する必要があります。
Q. 不自然な口コミを見つけたら、どうすればよいですか。
不自然さだけで不正と断定せず、判断を急がずに別の情報を確認します。規約違反が疑われる場合は掲載先の通報窓口を使う方法がありますが、人物や店への断定的な拡散は慎重に考えるべきです。
確認する力が大切になるほど、その時間や知識を持つ人と、持ちにくい人の差も気になります。次回はAI時代のネットリテラシーと、新しい格差を考えます。
出典・参考資料
外部資料の説明とSofriaの考察・提案を分けて記載しています。技術や制度は資料確認時点の情報です。

